9年前と2年前に、ダラムサラで、バラナシ出身の先生から歌を習っていました。
今回は、音楽の街、バラナシで、誰かいい先生がいないか探してみようということで、チェリンもバンスリ(インドの横笛)を習いたいので、一緒に探しに行きました。
最初に訪ねたのは、2年前に、南インドの禅センターで出会った、ドイツ人女性の紹介で連絡を取ったインド人女性。
レッスンの価格は1時間200ルピーと聞いていました。
電話で「今も同じですか?」と聞いてみると、「今は300になっている」とのこと。
私たちが住むアッシーガートから、先生のところまでは、オートリキシャを2台乗り継いで、なかなか遠い道のりでした。
「バラナシ大学についたら、大学内にいて、外に出ないで、また電話してください」とのことで、「大学の音楽の先生かな。だったら、専門的に学べるからいいね」と二人で想像していました。
お名前も、「シャーストラ(聖典)」をマスターした人、教えている人という意味である、「シャーストリ」さんということで、ますます、大学の先生だろうという想像は強まっていました。
バラナシ大学は、立派な門構えの、大きな大学です。到着すると、チェリンが電話しました。
「小さい門の前まで来てください」
大学内はとても広いので、オートリキシャを使っての移動です。
到着し、また電話すると、「今度は門を出て、左に歩いてください」とのこと。
二人の頭の中に、?マークが浮かび始めました。あれ?大学内の寮に住んでいる先生かなと思っていたけど、違うの?
電話で言われた通り進んでみると、住宅街でした。部屋に通され、ベッドの上に座り、会話が始まります。(インドではよくあるパターン)
自己紹介や、紹介されたいきさつなどを話し、音楽の話になります。
先生は、言いたいことが山ほどあるようで、チェリンのヒンディー語から英語への翻訳が、全く追いつきません。翻訳に被せてくるように、次々と言葉が飛び出します。
他の先生はこうだけど、私の教え方はこうで~
他の教室に通っていた人は、全く歌えなかったけど、うちに来たら歌えるようになって~
などなど。
先生が、とても音楽に対して情熱をお持ちなのはわかった。でも、歌い方に魅力を感じなければ、習いたいと思わないので、一度歌を聞いてみたい。
せっかくの大切な時間を使って、学ぶのだから・・・。
「カヤールとドゥルパド、どちらのスタイルを歌われるんですか?」と聞いてみると、「どっちもです」というので、すごいな~、前習っていた先生は、カヤールだけだったけど、この先生はどちらも?と思い、
「少し歌ってみてくれませんか?カヤールとドゥルパドの違いを、主人に歌って説明してもらえませんか?」と言いました。
「ああ、君が前から言っていたやつね」とチェリン。
すると、先生は「どちらも、そんなに違いはないんですよ」と言い、いろんな話を始めました。
あれ?違いを聞けないのと思って、少しがっかり。チェリンが、なんか逃げてるみたいだね、と言います。
「あなたの歌を聴かせてもらいたいんです。少しでいいので」と言うと、「ちょっと待ってください。息子が楽器が持って来てから」
そうして、またいろんな話が出て、数十分後に、息子さんがハルモニウムを持って来ました。
先生は、「一緒に歌いましょう」と言って、インドのドレミファソラシドである、サレガマパダニサをハルモニウムに合わせて、歌い始めました。
あれれ、また先生の歌は聴けないのかな?と思いつつ、仕方なく、私は、先生に合わせて歌いました。
でも、私のスケールと、先生が弾いているスケールとは違い、歌いづらいのです。
前の先生の時は、私のスケールがどれかを見極めて、それに合わせて歌ってくれました。
私の声は低く、F#でした。
この先生に、「私はもっと低いスケールで歌っていたんですが・・・」と言うと、「みんな、ここから始めるんですよ。低いところから始めると、高い声を出せるようになるまでに時間がかかるんですよ」とのこと。
ちょっと、いぶかしく思って、「前の先生は、無理に自分の限界を超えて高い声を出そうとすると、喉を痛めるって聞いたんですが・・・」と聞くと、
「高い声で練習しないと、高い声は出せるようにならないんです」との答え。
そして、三度目のお願い「少し、あなたの歌を聴かせてもらえませんか?私は、ヨガと瞑想を教えているんですが、瞑想的な歌を教えてもらえますか?」
ようやく先生は歌を歌ってくれ、「いいですよ。私もヨガのコースを終えました。ヨガも瞑想もやっていますから、わかりますよ」とのこと。
チェリンは、日本語で私に「まあまあ」と、先生の歌のことを言いました。
でも私は、先生はすごく情熱的みたいだから、レッスンしてみようかなと思いました。
レッスンは、最初、友人から1時間のレッスン料は200ルピーと聞いていたけど、電話で300ルピーになったと言っていたから、2時間受けることで割引になるか聞いてみよう、とチェリンと日本語で話し、
「わかりました、じゃあ、1日2回レッスンを取りたいので、2時間で500ルピーでどうですか?」
目をまん丸にして、「ノー!無理です!」と先生。
「前は、私たちの友人に200ルピーでしていたと聞いていたので、最初はそのつもりだったんです」と言うと、
「前は、町の中心に住んでいて、たくさん人も来ていたし、競争も激しいエリアだったから、価格を下げるしかなかったんです。でも今は、生徒も少なくなりました」と、すごく一生懸命話しているので、
「分かりました、分かりました。では、2時間600ルピーということで、了解しました」
と言うと、また、
「ノー!私のレッスンの1時間の料金は600ルピーです。私は、自分の先生には2000ルピーも払って学んでいます!」とのこと。
「電話で300ルピーと言っていませんでしたか?」
「それは、今日のお試しレッスンの分の料金です」との答えにびっくり。
「そんな話は聞いていませんよ。学校に、概要を聞きに行って、料金を払うように言われたことはないです!今日のことも、お試しレッスンだとは私は捉えていません」と強めに言うと、
「OK…」と少し気弱な感じの返事。
インドのよくある騙しの手口のようで、まさか歌の先生がそんな出方をするとは思いませんでした。
チェリンと帰り道、あれ?と思ったことがいくつかあったよねと話しながら帰りました。
「僕は、先生に歌を歌ってと頼んでも、なかなか歌ってくれなかったから、逃げているように感じたよ。歌を聴いても、普通の人が歌っている感じで、あまり良くないと思った。でも京子さんが、習いたいって言ったから、正直びっくりしてたよ」と言いました。
ここは、やめて、また探そうということになりました。
滞在時間が短いので、翌朝、早朝から街を歩き回りながら、次の先生を探しました。
すると、今度は、思いがけず、すごい先生に出会ってしまったのです。
つづく